怒られる男の日記

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【読書感想】世界で一つだけの殺し方/深水黎一郎

 深水黎一郎さんの「世界で一つだけの殺し方」を読んだ。

世界で一つだけの殺し方 (講談社文庫)

世界で一つだけの殺し方 (講談社文庫)

 

深水さんの特徴は、ぶっとんだ豪快系トリックだったり、学問系(主に音楽)のうんちくだったり、作品によって色が変わる、よく言えば多彩な、悪く言えばつかみどころのない作家さんだ。

本作は、どっちかというとうんちく系、知識系のトリックで、正直微妙なほうの深水作品かな、と思った。とはいえ、そのトリックを成立させるための舞台設定はかなり奇抜かつ豪快で、そこだけでも十分に楽しめたし流石でもあった。

 

2本の中編が収録されている。一本目の「不可能アイランドの殺人」は、休日に両親とともに出かけた10歳の女の子が、次々に非現実的な謎現象に巻き込まれる。不思議に思っているうち、殺人事件が起きて…という話。

初めはいろいろと想像をめぐらせたが、種明かしは科学知識系のあれこれだった。科学の素養があるひとなら面白いのかもしれないが、こちとら物理・科学など忘却の彼方。説明を受けても、あっはい、くらいしか思うところはない。

ただ、殺人事件の真相、トリックそのものよりも犯人と動機についてはかなりインパクトがあったし、心にダメージを受けるものであった。やはり、幼い女の子が出てくると感情移入度が上がってしまう。

 

もう一本「インペリアルと象」は、冒頭タイの象使いの少年のエピソードから始まり、おおっ?と引き付けられたが、実はここは本筋には関係なく、舞台は日本にうつる。動物園の企画で毎月行われているクラシックコンサートの途中、一体の象が暴れだして飼育員が殺されてしまう。果たしてこれは事故なのか、それとも?という話。まあ、もちろん殺人なんだけれども。

ほとんど全編、クラシックに関するうんちくで占められている。しかし、ここに実はトリックのヒントが隠されているので、一応読まざるを得ない。読んでみると、クラシックにとんと関心のない自分でも興味を持てる様な、なかなかに面白いエピソードの数々であった。

肝心のトリックは、音楽がカギということで、そんなもんわかるか!というたぐいなんだけれども、この仕掛けをなすための犯人の壮大かつ繊細な仕事ぶりを想像すると面白い。音楽にしろ象にしろ、殺人トリックに利用されて気の毒だが、この無理やり加減が深水ミステリの味なのだ。

 

最後に、この2編はそれぞれ完全に独立した作品だけど、ゆるくつながっているポイントがある。ちょっとした遊び心レベルのつながりだが、こういうのは好きなので嬉しかった。